秋の受験生
早いもので9月も終盤。秋の入り陽はどんどん早くなっていく。受験生にしてみれば、超速のテトリスやぷよぷよをやっているような感覚ではなかろうか。次々落ちてくるブロック(ぷよ)を必死にさばいている。要領よく俊敏な動きが要求され、少しでも気を抜くとゲームオーバーである。一発逆転を狙って「長い棒(連鎖)」を待つ者もいるようだが、ご存知のようにそんなに都合よく落ちてはきてくれないし、そもそも受験においてそんなものはない。というか、そんなものにすがるようでは終わりである。
金曜19時50分。授業開始10分前。次々生徒がやってくる。模試が返って来たらしく、結果を拝見する。なんやかんや言い訳をする者は危うい。まず事実を素直に受け入れることである。そして客観的にきちんと分析し、今後の勉強法に活かさなければならない。結果が悪いから見たくもないと机の奥にしまうのではなく、むしろ悪いからこそ穴が開くほど凝視しなければならない。
まずは英単語の試験とイディオム試験を行う(20分)。覚えてくる数は高1高2では100個だが、高3では160個になる。難関大や英検準1級を意識した改訂版なので、難易度は高2までの基礎版より格段に高い。イディオムの試験も毎回100個近く覚えてこなければならない。それでも授業前は談笑ができるほどに余裕である。高1から段階的に積み重ねてきたからであろう。入試直前には全範囲のすべての単語・イディオムが頭に入っていなければならないわけで、そう考えるとこれくらいのことは朝飯前であってもらわなければ困る。
次に動詞の語法のプリント(試験)を行う(30分)。満点者が3人というできだった。基礎力は問題ないが、レベルの高いものにもっと取り組む必要がある。上位の大学ではありきたりな文法事項は問われない。もっと重箱の隅をつつくような問題ばかりが出る。言い方を変えれば、ネイティブでさえ首を傾げるような時代錯誤の文法事項が出る。つまり悲しくも、「4技能の為の文法」という大前提を捨てて、「文法問題の為の文法」を徹底せねばならない。以前、回答欄に「意図された正解はAだと思われますが、使用頻度の点から考えるとどれも選びたくありません」と潔く書くようにと(冗談で)言うと、「先生、マークシートです」と返された。
授業も半ばを過ぎ、前回終了間際に回収し、添削した英作文の答案を返却する。できはピンとキリに分かれる。ピンの生徒はほぼOKだが、細かい語法や不自然さ(ネイティブなら絶対にそう言わない)の点で減点をされる。キリの生徒は、操るべき英語に逆に完全に操られている。また、最低限、和文と同じ意図が伝わるような英文を書かねばならない。こねくり回して伝わらないなら、単語の羅列の方がまだましである。
次に読解(準1級、約500語)を行った。口頭で(即興で)訳してもらうのだが、それぞれに半年前と比べるとかなりうまくなったと思うが、受験を考えるとまだ足りない。関係代名詞であれ、文末分詞構文であれ、基本は原文通りに訳すことである。つまり、勇気がいることではあるが、なるべく前から訳すことを意識しなければならない。また日本語にも気を配ること。"increase the safty"「安全が増える?」のような訳は勘弁してほしい。頼むから来日したての留学生みたいな和訳はしてくれるな。たまに1級の読解も混ぜて行うのだが、さすがにその際の理解度は60%程度に落ちる。このあたりが高校(3年間)の限界か。
授業が終わって時計を見ると22時20分。毎回延長しているとはいえ、今回は30分以上の延長になってしまった。迎えの保護者を待たせていると思うと申し訳ない。というか、イライラしている様子を思い浮かべると恐ろしくすらある…。一方で、生徒に対しては連帯責任というか、30分延長のほうが1年浪人する(あるいは人生を棒に振る)よりもましだろうから「きばらんかい!」と言いたい。むしろ、勇気ある誰かが「もう2、3時間やりましょうよ!」と言い出さないものかと思っている。
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