楽天(食欲)の秋
毎年秋になると、底なしに食が進むのだが、歳を重ねるにつれ揚物など胃に負担のかかるものを受け付けなくなってきた。明らかに胃薬を服用する機会が増えたし、肉料理などを前にすると胃薬の有無を確認せねばどこか不安にさえなる。とは言え、先日、トウモロコシが大好きなので、楽天で北海道産トウモロコシLLを25本も購入してしまった。とてつもなくでかくて重い箱が届くと、「こんなに買ってどうするの?」と奥さんに怒られてしまった。
後悔すでに遅しである。楽天の宣伝コピーや写真に上手く騙されたのかもしれないが、実際そこまで美味しいというわけでもなかった。ほのかな甘みはあるものの、その長所を補って余りあるほどに粒皮が固めで、すぐ歯と歯の間に挟まって気分が悪い。他にも「嶽きみ」とか「ホワイトショコラ」とか美味そうなブランド品種もあったのだが、つい山盛り食べたいという貧困な発想から、名もなき安トウモロコシに手を出してしまった。
冷凍庫をほぼ占拠してしまうことになり、また衛生的に良くないのもあり、冷凍庫の扉を開ける度に奥さんから文句が飛んでくる。早く(冷凍庫の)スペースを空けわたすようにと脅されて一日2,3本食べているのだが、先ほど述べたように私の胃がもってくれんのである。処理能力を完全に超えてしまって消化不良や逆流性食道炎を起こしている。汚い話で申し訳ないが、ここ数日下痢が続き、顔は吹き出物だらけになってしまった。気のせいか、鏡に映る顔色もトウモロコシのように黄味がかっている気がする。
話はそれるが、カナダ留学時、「私の名前は日本語でどういう意味?」という話題になり盛り上がったことがある。バンクーバーやトロントのように多くの日本人がいれば、彼らはまだ良識のある日本人を捉まえ、納得のいく答えを得られたかもしれない。しかしながら、ウイニペグという辺境の地にあっては、日本に纏わるどんな知識も情報も、一癖ある私を頼らざるをえなかった。その中でも、「私の名前を漢字で書いてほしい」やら「私の名前は日本語でどんな意味?」というのは、コーヒーを飲みながらであれ、酒を飲みながらであれ、大抵は誰かの気分が害されるというやるせない結果となった。
いくつか挙げると、ジュリーは「受理」、メラニーは「マロニ―(シラタキ)」、ケイトは「毛糸」という具合である。そんな中で一番かわいそうだったのが、その当時の英会話学校の校長ゲリーである。皆の笑い声を聞きつけてやってきたのだが、開口一番「じゃあ僕の名前は?」と訊いてきた。一応、「世の中には知らなくて良いこともある」とかなんとか言って逃げようとしてみたとは思うが、「今度日本に出張で行く時に自己紹介で使いたいので教えてくれ」と言うのである。仕方なく「君の名前はdiarrhea(下痢)だ」と答えると、案の定、ゲリー本人は腹を下したようなしかめ面になり、その他大勢は腹を抱えて笑っていた。
「食欲の秋」の話はもう少しだけ続く。トウモロコシに引き続き、また「やってしまった」のである。何を隠そう、もうすぐ楽天で注文した「20世紀梨 5キロ 訳あり品 家庭用」が届いてしまう。私は京都出身なので梨と言えば「鳥取の20世紀梨」が定番であり、「あの懐かしい味をもう一度」とついつい手が(クリックする指が)伸びてしまった。正直そこまで梨が好きというわけでもないのだが、トウモロコシと同じく一時の妙なテンションに流されてしまったらしい。ちなみに奥さんにはまだ言っていない。
« 学校の講習について | トップページ | 英会話はもっとスパルタでいい »
コメント