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2020年7月20日 (月)

喫茶店での一コマ

調布駅近くにある「シャノアール」という喫茶店を訪れた。BGMにジャズが流れている店内は驚くほど静かであり、コロナ禍にあるので客達はお互いを慮ってか、節操なく大声で話す者は誰一人としていない。それぞれがお互いに干渉せぬよう、朝の平穏なひと時を静かに楽しんでいるようだった。流れるようなピアノの調べに乗せて、パソコンをたたく私の指もどこか軽やかである。時にコーヒーを啜りながら、穏やかに流れる時の波間にたゆとうのは何とも気分がいい。しかしながら、そんな幸せも束の間、映画や漫画でよくあるプロローグのように、「平穏な日常とは突如思いがけぬ存在によって踏みにじらてしまうもの」ということを、これから思い知らされることになる。

来客を知らせるチャイムが鳴り、女性6人組が勢いよく入店してきた。鼻息荒く店内を歩く様子は「風の谷のナウシカ」の激昂したオウムの群れを思わせる。彼女たちは席に着いてマスクを剥ぎ取ると、いかにも「喋りにきたで~!」という感じでウズウズしている。近くのサラリーマンはそれを察知してか、作業をやめて荷物をまとめ始めた。6人はそれぞれ手にアルコール消毒をしながら「今日も200人超えたんだって~!」「やばいよね~!」「やだ~!」とコロナ談義を始めたのだが、マスクをせずに喋っていることに違和感を感じてる者は誰もいない。私は心の中で「じゃあマスクをとるなよ!」と何十回も突っ込んでいた。

彼女たちの核爆発のような笑いが静かな店内にこだまし、聞きたくもない下世話な話が嫌でも耳に入る。もはや(お洒落を気取って)ピアノジャズにうっとり酔いしれている場合ではない。やがて彼女達の子供の話が始まったが、これもなかなかに聞くに堪えない。いかに勉強ができないか、学校のテストの点数が悲惨だったかといった「うちの子ダメ合戦」に発展していく。1人がエピソードを披露するたびに大きな笑いが起きる。「笑ってる場合じゃないやろ」と喉まで出かかったが、群れをなした女性は怖いので、あくまで心で思うだけでお口はチャックである。彼女たちの隣には、最も感染を避けるべき80歳くらいのお婆さんが座っていたがお構いなしのようだ。私は幸運にも7、8mほど離れた席にいたが、それでも念のためにマスクを装着した。また、作業していたノートパソコンの画面を防波堤にしようと垂直に立ててみた。が、11インチの画面では首から上は丸見えであり、気休めにもならなかったのは言うまでもない。

1時間半ほどして十分に喋りつくしたのだろうか、まるで闘いを終えた力士のように口数は減り、当初の殺気はすっかり消えていた。すると一人また一人とごそごそと再びマスクを装着し始めたのである。その場に居合わせた客(と店員)全員が、おそらく心の中で突っ込んだに違いない、「今頃付けるんかーい!」と。吉本新喜劇を見て育った私なんか、ずっこけて席から滑り落ちそうになってしまった。屋外のほうが熱中症の心配もあるので、距離を保てばマスクなんてしなくても良いのである。一方、店内でそれだけ長い時間、顔をつき合わせて喋るんだったら、それこそマスクをしなければならないだろう。彼女たちの後ろ姿を見送りながら、母親って大変なんだなと同情しつつも、当塾の生徒がこんなデリカシーのない大人にならないでほしいしと思ったし、子供が勉強できないことをネタにして笑いをとるような親にはならないでほしいと心底思った。

当塾も、備品の消毒、時々の換気、席の間隔を十分に保つことに気を付けながら、もちろん生徒も私も常時マスクをしている。生徒の健康を守るためというのもあるが、まず真っ先に重症化するのは私なので自らの身を守りたいというのもある。マスクをして3,4時間喋り続けると、呼吸はだんだん深くなり、もはや水泳のような息継ぎとなる。酸欠なのか目が霞み、頭も少しくらくらする。呼吸のしやすいマスクみたいなのがあればぜひ教えてほしい。また、最近やたらと吹き出物ができるのだが、これもマスクのせいだろうか。特に髭剃り後など口の周りが真っ赤になり、まるで泥棒みたいである。一方で、マスク着用の二次的なメリットとして「マスク美人」という言葉もあるようだが、私には関係ないらしい。悲しいかな、マスクを付けてどれだけ顔の表面積を覆い隠しても、全くもって男前にはならない。


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