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2021年9月30日 (木)

カナダ留学 到着編&ホームステイ事情

「日本から手ぶらできたのか…」ホームステイファミリーは、ウエストポーチ一つで玄関に佇む私を見て驚いていた。我ながらとんでもない留学生が来たなと思った。ノートパソコンも電子辞書も何もかもコーディネーターさんの車の中である。お土産も手元にないので「どうか、これで一つよしなに」の挨拶もできない。すぐに電話をしてもらったので荷物は翌日に届けられ、「一つよしなに」の儀式は一日遅れでとり行われたのだが、もはや想定していた効果を期待できるものではなかった。今振り返ればこれは波乱に満ちた留学生活の幕開けにすぎず、仮にお土産がタイミングよく渡せていたとしてもこの先の様々な衝突は避けられなかったと思う。

ホームステイの不満を書くと「我儘が足りないんじゃない?」とか「運が悪かったんじゃない?」とか思われるかもしれないが、実際には、留学生がお互いのホームステイ先の不満を言い合うのは日常茶飯事であり、言語や文化の違う(おそらくは違わなくても)他人と暮らすというのは得てしてそういうものである。「ウルルン滞在記」のような短期間の滞在なら、相手の嫌な部分を知らないままで済むかもしれないし、番組スタッフがそれなりに選りすぐったステイ先を用意すると思うのだが、現実の留学はもっとシビアなのだ。

ホームステイ事情として、まず知っておかなければならないのは、彼らの第一の目的は「お金」である。もちろん文化的な交流やら、布教活動の一環やら、単なる世話好きやら、受け入れる表向きの理由は様々だが、留学生を受け入れる動機の根幹にはお金がある(日本で日本人家庭が外国人留学生を受け入れる事情とはまったく違う)。1人の留学生を受け入れると月800~1000ドル、日本円で8万~10万円の収入になる。ウイニペグのある家庭は、地下に部屋を増築して4人もの留学生を受け入れていた。つまり副収入として毎月32~40万円が入ってくるわけだ。ただ断っておくが、そのような家庭が必ずしもダメなホームステイ先だとは限らない。実際にその家庭も「面倒見がいい」ことで知られ、留学生が順番待ちするほどに人気があったからだ。留学がもっと盛んなバンクーバーやトロントでは、家の敷地に留学生用のプレハブの家をわざわざ建てて、そこに留学生を詰め込めるだけ詰め込む家庭もあった。私たちはそんな悪評高きホームステイを「豚小屋」と呼んでいた。

ホームステイファミリーに、日本人留学生は好まれる傾向にあった。中国人や南米人は自己主張が激しいし、門限やお風呂の時間などその家のルールを守らないことが多い。韓国人も同じく自己主張は強かったし、同族意識や自国文化を引きずり過ぎる傾向にあった。日本以上に年功序列にうるさく、また食事にキムチが欠かせないのか「冷蔵庫や部屋がキムチ臭くてたまらない」という嘘のような本当の話も聞いた。一方で日本人はというと「郷に入っては郷に従え」の精神が根底にあるのか、比較的家のルールは守るし、自己主張は控えがちである。よってステイ先と衝突するリスクは少なく、彼らにとっては扱いやすい存在だった。(その当時の個人的見解です)

「それが良いことなのか」と問われれば「否」である。実際に我慢をし過ぎて精神的に病んでしまう日本人留学生は多い。そうならない為にも、「いい子ちゃん」にならず、ステイ先に対してそれなりに主張や要望を通すことは重要である。具体的には、お風呂に入る時間や門限、勝手に冷蔵庫を開けて中のものを食べたり飲んだりしてもいいのかなどである。それらを初日のうちに確認し、すぐさま遠慮せずに実行しなければならない。引いて待つのではなく、彼らの生活圏に積極的に踏み込んで行くのである。数日の滞在ならともかく、数か月も一緒に生活するとなると、他人行儀のまま振る舞い続けるのはさすがにもたない。途中から態度をガラッと変えるのも変なので、なるべく始めから大胆に行動していった方が得策なのだ。「ずっと良い子でいよう」「ニコニコしていよう」「イエスマンに徹しよう」と思うのは厳禁で、お金を払っているんだから主張すべき所は主張するという姿勢が大事である。

話はカナダ到着の初日に戻る。京都卸売り市場でのバイト経験から、どんな理不尽なことにもめげない自信があったが、用意された自室に行くとベッドやタンスはあるものの「机」がない。心を落ち着けてどんなに見回してもない。もう少しで「カナダに何しに来たと思ってるんですか?勉強でしょ!部屋に机がないってありえないんですけど!」と突っかかりそうになったが、初日から揉めるわけにもいかず、またそんな英語力もなかったし、トランクに忘れた荷物のことで気力も失っていたので、弱々しい笑顔で「どこで勉強したらいいですか?」と訊くのが精一杯だった。すると台所のテーブル(=食卓)を指さされ「ここでやればいいのよ」と言われた。

普段なら泣き寝入りするはずの私だったが、それをきっかけに頭の中の何かがプチンと切れた。それを了承し、「その言葉に二言はないよな!」とは言ってないものの、毎日3,4時間キッチンテーブルを占拠した。むしろ自室で勉強するよりもはかどったし、発音を矯正してもらったり、質問もその都度訊けたりしたので良かった。また、結果的に引きこもりにならずに済んだので、精神衛生上にも良かったのかもしれない。後日、やっぱり自室に机が欲しくなった私は、近くのショッピングモールでダンボールを拾ってきて机を手作りした。その出来に満足していたが、教会の帰りに遊びに来た孫2人によってすぐさま破壊された。それ以来、自室に机を持つ夢は諦めた。



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