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2022年12月10日 (土)

第一印象の罠

私は「第一印象」というものをあまりあてにしていないので、入塾後の1~2ヶ月くらいをかけてその人物像を調整していく。人物像と言うのは、ひょうきんとかおとなしいとかではなく、向上心や忍耐、自分の足で立って歩こうという意志の有無やその大小のことである。聖人のような完璧さを求めるわけではないが、その一抹の欠片くらいは見せてせてほしい。しかしながら、それは面談や体験授業だけではなかなか分からない。その後の授業でのやりとりからようやく透けて見えてくるものなので、多少の時間がかかるのである。

だから、体験授業後に「うちの子どうでしたか?」と訊かれても、漠然とした学力の印象しか答えられない。基本みんなできないから塾に来るわけだし、多くの東大生も医学部生も英語ができないと思っている私からすれば、ほぼ全員「できない」と答えるしかない。そこで「できるようになる可能性」や方法論、精神論の話をするしかないわけで、その子のもっと核となる性格や学力を掴んだり、当塾の授業を上手く活かして成長していけるかどうかを診るためには、やはりそれなりの時間が必要である。なので、その裏付けが取れた1,2か月後にようやく退塾を勧めるケースもある。

いつも言うように、高校1年生の入塾時の学力は低くても仕方がないと思っている。一つには、中学の悲惨な英語教育環境が原因だからであり、生徒はむしろその犠牲者だからだ。また中学卒業までは部活動に打ち込んでもいいと思っていて、勉強に手を抜いてもいいというのではないが、中学の学習内容は「二足の草鞋」…もとい「文武両道」の中途半端な精神でもなんとかなると思っているからだ。そして高校から心機一転、腰を据えて勉強に専念すればよい。高校3年間あれば、どんなにできなくても、早慶や東大に入れる英語力はつくと信じている。

中には生徒自らが電話をかけてきて、「どうしても〇〇大学に行きたいので個別指導してもらえないか?」と受話器ごしに長時間熱弁してきたり、一方で、電話もなくいきなり押しかけてきて志望校のデータ、現状の学力、これからの学習予定などをレポートにまとめてきてプレゼンテーションする生徒もいた。学校と勘違いしているのか「毎日指導してほしい」と無茶をいう浪人生がいたかと思えば、週二回は辛いらしく「一回だけの参加でいいですか?」という軟弱な現役生もいた。長時間の電話も、突然やって来られるのも、無茶苦茶な要求も正直迷惑なので、そこは一言注意しながらも、それだけやる気があるのだと良いように受けとめた部分もある。と同時に、これだけの傲慢ぶりを見せといて、少しでもサボったら思いっきり馬鹿にしてやろうと思っていた。

ある生徒との面談で「なんでうちの塾に来たいと思ったの?」と訊くと「授業料が安かったので」という悲しい返事で、次に「もっと早く入塾してくれたら良かったのにね」と言うと「家が貧乏なので高3から通うのがやっとだったんです」ともっと悲しい返事が返ってきたこともあった。「そんな切ないことを言うなよ…」と思ったが、今から思えば口にしなければならないほど真に貧しかったのである。塾の月謝は東京都の「チャレンジ奨学金」を利用すればなんとかなるらしかったが、それでも生活費や学費のために、深夜までファミレスでバイトをする生活を続けねばならなかった。

それからその子は入塾したのだが、忙しいバイト生活にあっても、私の出す容赦ない全ての課題を完璧にこなしてきた。「ちゃんとやらないと授業料がもったいないじゃないですか!」と悲しい正論を述べていた。それ故にか、たった1年とはいえ目を見張るほどの成長ぶりだった。最終的に数打てばMARCHに引っかかるレベルにまで到達したのだが、悲しいかな、その子の経済事情からして合計2回しか受験できなかった。必然的に必ず受かる安牌な所しか受けられず、そこに合格して本人は喜んでいたが、私の財布から受験料を捻出してでも上位の大学をチャレンジさせてあげればよかったと後悔している。

このように体験授業や面談を通しての第一印象は様々でおもしろい。犯罪でも犯して連行されてきたかのような絶望の表情でやってくる子もいれば、まるで救世主でも拝顔するかのように希望に満ちた眼差しを私に向ける子もいる。第一印象なんかくそくらえと言わんばかりに面談中に堂々と眠りこける子もいれば、良く見られようと実際より高い偏差値や学年順位を言ってしまい親にたしなめられる子もいた。だが結局のところ、私の抱く第一印象はあてにならないことが多い。むしろ第一印象なんて裏切られる為にあるといってもいい。では私に対して抱く生徒たちの第一印象はどうだろうか?奇人?変人?怪しいオッサン?当たりである。



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